Liber Primus 第一之書

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読了:アルカジイ&ボリス・ストルガツキー『ストーカー』

▼アルカジイ&ボリス・ストルガツキー『ストーカー』(深見弾訳 ハヤカワ文庫)

 

タルコフスキーの映画化で有名な、ストルガツキー兄弟による原作。原題は「路傍のピクニック」で、本書の問題意識を暗示している。映画の方はずいぶん前に劇場で見たが、象徴的な表現が印象的ではあったものの、どのように解釈すれば良いのか今一つピンと来なかった。原作の方は、映画とはだいぶ様相が異なり、またよりわかりやすい説明があって素直に楽しめた。そういう意味では、キューブリックの『2001年宇宙の旅』と、クラークによるノヴェライゼーションとの関係と似ているかもしれない。

 

いわゆるファースト・コンタクトものに分類される作品だろうが、アメリカSFやとりわけハリウッド的SF映画と大きく異なるのは、そもそも異星の知性との意味ある接触が成り立っているのかすらわからない、不可知性・理解不可能性が強調されている点だろう。その点ではレムの『ソラリス』と近い位置にあると言えそうだ。ロシア・東欧圏のSFのこうした傾向は、アメリカ的な楽天性(たとえ侵略的な異星人であっても、その「意図」はつねに了解可能なものとして描かれる)とは凡そ異なり、そもそも人間の理解の限界を暗示していて、好感が持てる。