欲望
本を買うと、また次の本を買いたくなるものらしい。
先日購入したクグラー『言葉の錬金術 元型言語学の試み』(森岡正芳訳 どうぶつ社)を読んでいたら、ユングの元型理論のレヴィ=ストロースに対する影響や、ソシュールの構造主義言語学との類縁性が指摘されていて、どちらにも疎いのでこれは買わねばと、早速ネット書店のカートに次の本を入れた。
『親族の基本構造』は、以前に番町書房から邦訳が出ていたが、これは別の訳者による新訳。調べてみると、旧訳は人類学の専門家が訳していて専門用語の翻訳は正確だが甚だ読みづらいらしい。新訳はプロの翻訳家によるもののようで、全く別物のように読みやすくなっている様子。高価な本だが、レヴィ=ストロース初期の代表作でもあるし、新訳の方を購入リストに入れることにした。
ソシュールの言語理論について知りたいのなら、本来であればソシュール自身が書いたものを読むべきなのだろうが、そもそも自らの思想を著書として残さず、講義ノートと聴講者による講義録しかないところから始めるのは大変すぎる。そこで代わりに、ソシュール研究の第一人者であった著者による『ソシュールの思想』を選ぶことにした。アマゾンのカスタマーレビューを見ると、丸山圭三郎が本場フランスの研究者を凌ぐほどの、ソシュール研究の世界的権威であったことがわかる。丸山は言語学から出発して、その後独自の思想を展開したようで、ソシュールや言語学に収まらないさまざまな著書がある。そうしたもののなかの小著は持っていたが、源流であるソシュール研究については全く知らなかったので、これも必携の書ではあるだろう。